捨てるものから生まれる自然にやさしい素材。Onibegie

MONTBLANC

開発ストーリー

小松マテーレ株式会社の染色技術
“Onibegie®”開発にかける想い

合成繊維を、天然原料で染めることはできないか?
一度はあきらめた夢を実現させたのは、社員食堂の方の一言。

開発にかける想いや完成までの道のりについて、
小松マテーレ株式会社の技術開発部にお伺いしました。

“Onibegie®”の開発のきっかけを教えてください。

まず社会背景として、エシカルな思考でモノ選びをする人が増えてきました。マーケットも天然のもの、自然や生態系に優しいもの、安心安全なものを求めてきています。小松マテーレとしても、地球の環境保全に役立つ素材開発にはずっと取り組んできました。その中のひとつとして合成繊維も天然素材で染められないかというのが、我々にとっての命題でした。

天然繊維は草木染などの技術がありますが、合成繊維への応用は?

草木染の技術を生かせないかと当初は考えましたが、合成繊維を染めることはできませんでした。ユニフォームなど、仕事の現場で機能性や耐久性を求められる衣料の場合、丈夫で扱いやすい合成繊維が適しています。なんとかして合成繊維を天然素材で染められないか、その難問への挑戦は簡単なものではありませんでした。

合成繊維を天然素材で染めるという技術は、難しいものですか?

10年以上前にも挑戦しましたが、成功に至らず研究を断念しています。今回の研究においても、さまざまな素材でテストを繰り返してもうまくいかず、何度も壁に突き当たりました。そんな中、食堂で打ち合わせをしている際に、食堂の方が「白い長靴に野菜の色がついてとれない」とつぶやいた一言から、野菜で染めるというアイデアにつながりました。

タマネギの皮成分で色が定着しやすいことを実験。

食堂の方の一言をヒントに、研究はどのように進みましたか?

なす、ほうれん草、にんじんなど、食堂にあるさまざまな野菜を使ってテストを行いました。その結果、タマネギの皮の色素が、合成繊維に効率よく染まることが判明します。さらに、タマネギの皮で染めると、他の素材の色も定着しやすいことがわかりました。

「タマネギの皮」が、ほかの天然素材で染める際にも役立つのですか?

オリーブの葉や絞り殻、ワイン、ぶどうの絞り殻、お米のもみ殻、竹炭などで染める時も、タマネギの色素をベースに使います。そのため、商品名を“Onibegie®”と名付けました。

天然素材で、どれぐらいの色を出すことができるのですか?

タマネギの皮を共通成分として、6種類の天然成分を使って25色のカラーバリエーションをつくることが可能です。さらに増やすよう開発を続けています。

化学染料だけの色とは、どのような違いがありますか?

植物原料ならではの風合いの良い色が表現できます。たとえばベージュ色であっても、天然色素の場合はその中に数十種の色が入っています。だからこそ、色に微妙な奥行きが生まれます。また経年するほどに味わいが増してくるのも魅力のひとつです。この色合いを合成繊維で表現できたことが、“Onibegie®”最大の特徴と言えます。

染めることができる合成繊維の種類を教えてください。

織物、編物、薄地、厚地、伸縮性のあるものなど、あらゆる合成繊維に対応できます。また、はっ水加工、帯電防止加工、透湿防水加工など、ユニフォームに必要とされる加工も施すことが可能です。

どのような人に、“Onibegie®”シリーズを
使っていただきたいですか?

自然環境や生態系に配慮する意識の高い方には、植物原料で染めたユニフォームを着ることが、気持ちにもフィットすると思います。業種では、オーガニックの野菜や食料品、カフェやレストラン、ナチュラル系のコスメやアパレルショップなどを想定しています。 “Onibegie®”を着ることが仕事へのモチベーションアップにつながれば、我々もうれしく思います。

“Onibegie®”の今後の展開について、お聞かせください。

環境に負荷をかけないのはもちろん、地域を活性化させることもエシカルな活動にとっては重要です。そのため、原材料を地域の農家の方から仕入れるなど、地域に貢献できるスキームを作っていくことがこれからの役割と考えています。

技術提携・取材協力
小松マテーレ株式会社